夏雪~なつゆき~
「ただいま。」

広がる静寂。
俺はそこでようやく、両親がまだ帰っていない事に気付く。

今年買ったばかりの、高校用の通学鞄を玄関の片隅に放り投げる。

提出物もろくに出せない、否、出す気のない中学生。
特別頭が良い訳でも無く、悪い訳でもなく。
テストは大体80点以上。
これで提出物を出しているなら進学校に行くことも難しくなかったが…。

ある意味すごい事に、通知表は5段階評価で3、3、3…。

当然の様に、通学のしやすい超普通公立校に通い始めた。

進学校特有のどこかピリピリした雰囲気も無く「高校生活、皆で楽しもうぜ!」なんて感じだ。

ドラムが得意なので、部活には入らず、バンドで活動している。

「♪♪♪~♪♪♪~」

ポケットの携帯を開く。
相手は、バンド仲間の流[リュウ]

「もしもし…。」

「おぅ!颯か?」

「まぁ、そうだけどさ。なんで携帯で名前の確認が要る?」

「いや、それはだな…。読者の皆々様にいい加減お前の名前を覚えて貰わないとな。」
勢いで電話を切ってしまった。
誰だよ、読者って…。

考えてても仕方ないか。
もう寝るか。
飯は、明日食おう。
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