溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
濠のお見合いの事実を口にして、それが思ってた以上に私を苦しめていたんだと気づく。
ようやく聞く事ができたとはいえ、更にわからない返事ばかりの濠。

好きでたまらない想い故に焦りも右肩上がり。

『…詳しくは帰ってから話すけど、彩香ちゃんの名字わかるか…?』

「え…?何…えっと…
森下…だよね…?」

もう…突拍子もない予想外の質問ばかり。
一体濠は何を言いたいの?

『俺の耳の治療をしてくれてた医者も森下先生。…覚えてるか?』

耳の治療?
入院してた時のお医者さんの事かな。
私も風邪から中耳炎を併発して耳鼻科で診てもらってたけど…。
心臓の治療がメインだったせいか、耳鼻科のお医者さんまではっきりとは覚えてない。

「はっきりとは覚えてないけど…確か女のお医者さんだった?」

『そう。俺は今でも森下先生に診てもらってるんだよ。…彩香ちゃんは、森下先生の娘さんなんだ』

え?

今でも耳の治療に通ってるって事…?
とっくに回復してると思ってたのに、まだ悪いの?
心臓の音が大きくなって、ぎゅっと携帯を握り締めた。

『…あ、耳は大丈夫。
とりあえず定期的に診察に通ってるけど、俺の気休めだから』

「…本当に大丈夫なの?」

『…大丈夫。透子の心臓と同じ。検診行って安心してるだけ』

諭すような声が、ほんの少しだけ…心臓を落ち着かせる。
濠に関わる事全てに敏感になってしまってるって改めて実感…。

『見合いの事、彩香ちゃんから聞いた訳じゃないんだな』

「え…うん」

雪美さんが話してるの聞いたなんて言えないけど…。

『じゃ…誰から?うちの親か?』

「違う…」

『じゃ…誰から…?

あぁっ。今すぐ透子の体抱きしめて、全部聞きたいのになぁ。
何で一緒にフランス来ないんだよ』

…は?
濠…その叫び声は一体何?
切羽詰まった大きな声が携帯を耳元から離しても聞こえてくる。
多分、玄太くんにも聞こえてるはず…。




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