溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
不意に、離された玄太くをの体。
私の両肩を押しやるように離されて、瞬間何が起こったのか…。

「玄太くん…?」

微かに呟くしかできない私の目の前に差し出された携帯。

「悪かった。ゆっくりと濠さんと話せよ」

「あ…うん…」

受け取った携帯からは

『透子?』

と何度も呼んでいる濠の声。焦ったような大きな声に…心なしか私の気持ちは軽くなる…なんて濠が知ったら更に大きな声で怒りそうだけど。

「濠?もう家に着いたから。大丈夫だから。
観光に出かけるなら気をつけてね…。

それに…他の女の子…」

ふと口に出しそうになる雪美さんの存在…。

彼女の気持ちをどう受け止めてるのかもずっと私の頭にある…。

それでも、今聞こえてくる落ち着かない濠の声はきっと玄太くんに対する嫉妬…?

そう考えてる私は甘いのかな…。
それでも、そんな濠の様子が私の不安やせつなさを穏やかに収めてくれて、雪美さんの事を聞かなくても…土曜まで待てるくらいに自信を与えてくれてる。

「ううん…。
気をつけて出かけてね」

『わかった…。
それより、玄太には気をつけてくれよ。
わかるよな?あいつの気持ち…』

言い聞かせるような濠の言葉が私に染み入ると同時に、玄太くんの顔に視線を移す。

じっと…射るような…悲しげにただまっすぐに私を捕らえる玄太くんの瞳。

…そうか…。

わかってしまった…。

「今…わかった…。
やっと…わかった…」

『玄太に優しくするな。…思い出に負けるな…。
俺がいるって忘れるなよ』

もどかしそうな声。
慌てるわけじゃないけど早口な濠が何だか新鮮に思える。
普段余裕いっぱいだけに余計に。

気付いた玄太くんの私への想いに、私は驚きと戸惑いに満ち溢れてるけど。

玄太くんごめん。

その感情よりも、濠から見せられた彼の素の感情に私の心は揺れて暖かくなってしまう。

濠だけが好きだから。

ごめんね…。

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