溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
②
どんなに悩んでも苦しんでも後悔しても、必ず朝はやってきて。
「この外壁の色、珍しいね」
「あ、やっぱり気がつきました?メーカーの試作でまだ市販されてないんですよ。たまたまどこかで使わせて欲しいって話があって、展示場で試しに使ってみようってなったんです」
「そうなんだ。…いい色だね」
普通に仕事をこなしてる自分がいて、昨日の玄太くんの気持ちを知った現実が嘘みたいに思える。
「この展示棟の設計は昴がしたんでしょ?」
隣で図面を広げる昴に視線を向けると、展示棟の確認をしながら玄関に入って行く。
「俺も参加してるんですけど、この展示棟をベースにあと50区画の家を建てるんでかなりの人数動いてますよ。
透子さんの担当も相模さんが割り振ってたんで
猛烈に忙しくなります」
忙しくなるって言葉をわざと強調してゆっくりと話す昴に思わず苦笑してしまう。
相模さんのチームに呼ばれた時点でそんな覚悟はできてる。
建築家として第一線に君臨するカリスマのもとにくるあらゆる依頼はハンパない。
質においても妥協を許さない姿勢が更に信頼を生んで、相模さんの下にいるって事は仕事の量も結果も今まで通りにはいかない。
私が背負ったその現実は、全てコンクールで大賞を受賞した事によるもの。
予めわかってはいたけれど。
実際に異動をして新しい仕事に携わる事になって、無理矢理その状況を受け止めようと…自分自身足掻いてる気がする。