溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~



まさか、そんな事あるわけないのに。

濠から驚かされてきたここ数日のせいか、今日偶然に目にした家にしても濠の目論見通りに昴が案内したんじゃないかと勘ぐってしまう。

私の異動、引っ越し、大賞受賞…。
全て把握していた濠に驚かされてしまった私の感情の大きな波は荒れっぱなしで落ち着かないままに。

次の波に巻き込まれてしまいそう。

もう慣れても良さそうだけど、思ってもみない濠の私への強い関心が、何度も何度も…驚かせる。

そしてその度に…濠から離れられない私を作り上げていく。

『小山内竜臣』

彼についても…どうして知っていたんだろう…。
私が濠にこの名前を出した事なんてないのに。
実際、私ですら彼の事を思い出す機会は滅多になくて、今ではそれを悔やんでるくらい。

もう少しちゃんと彼を受け入れて理解してあげれば良かったと…後悔ばかりなのに、濠に私が直接言う事はないと思う。

なのに…どうして濠は

『小山内竜臣』

という建築家を知っているんだろう。
表に出て目立つ仕事を積極的にしていたわけじゃないから、設計を本業にしていない人にはあまり知られていないはずの名前なのに。

それなのにどうして。

『小山内弥恵さんが
会いたがってる。
ちゃんと連絡しろ』

なんていう宿題を出すんだろ。

はぁ…。

思わず出てしまうため息を隠す気力もなくして、電車に乗り込んだ。

既に帰宅ラッシュも過ぎた夜8時。

適度に空いた席に座って、待ち合わせの場所に向かう。

弥恵さんに会うのは久しぶりで、少し緊張してしまう。

小山内弥恵さん…。

私の実の父の奥さん…。

そう、小山内竜臣の二人目の妻。
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