溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
思いがけない濠の行動にも慣れてきたけれど、今聞いた事実には言葉を失ってしまった。
二人向かい合わせに座っている和食のお店。
節度の保たれた静かな店内には、快適に食事を楽しむ声や食器の音しか聞こえないにも関わらず、その微かな音さえも遠くに感じるくらいに呆然と弥恵さんを見ていた。

「あら…濠くんが予想してた通りね」

「え?」

「ふふっ…。
有二さんと一緒に会いに来たなんて知ったら、透子ちゃんは目を点にしちゃうって笑ってたのよ。
濠くんには何でもお見通しなのね」

おいしそうにお吸い物を口にする弥恵さんはのんびりと笑っている。
その姿にもどう答えていいのか…。
訳がわからなくて箸も止まってしまう。

「たくさん話したわよ。透子ちゃんの小さな頃の思い出や…心臓の病気の事も」

なんてことはない世間話をするように話す声は明るく楽しそう。
思い出し笑いとも見える表情でくすくす笑う。

「有二さんが小学校の運動会で透子ちゃんのリレーの応援に熱くなりすぎて先生に羽交い締めにされたとか…高校受験の当日は緊張しすぎで有二さんが気を失ったとか…

本当、透子ちゃんが大好きなのね」

「そんな話を…したんですか…」

「そうよ。透子ちゃんの人生を振り返って…たくさん聞いたわね…。
有二さんも楽しそうに話してくれたのよ」

「……」

一体…二人は何を目的に弥恵さんに会いに行ったんだろう。
もともと気が合う濠と有二ぱぱは、私がいない時にでも二人で飲みに行って親しくしている。
母さんと結婚した後も子供を作らず私一人に愛情を注いでくれた有二ぱぱだから、私だって大好きで。

本当なら自分と血の繋がった子供が欲しかっただろうけど、そんな話は一切せずにいつも笑っていた。
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