溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「竜臣くんも…きっと
喜んでるわね。
透子ちゃんを自分の手で幸せにできない事を…
ずっと悔やんで責めてたから」

あぁ…やっぱり。
弥恵さんに、あんな穏やかに意識が遠くに飛んでいくような顔をさせられるのは…あの人…しかいないって思ってた。
小山内竜臣…。

私の実父。

母さんと別れた後しばらくして弥恵さんと再婚した父。
父の仕事が忙しかったのと、母さんも再婚したせいで、私の記憶には父と顔を合わせた記憶はないし。

去年父の死を知らされるまで、父について詳しい事は知らなかった。

その知らせは弥恵さんからの葉書で受けた。
去年の年末近くで…ちょうど濠は海外に出張に行っていたから私一人で受け止めないといけなかった。

記憶にない父の姿。
亡くなったって聞いても現実味がなくて戸惑ってばかり。
濠がいないせいで必要以上に重く感じてしまった。

有二ぱぱが私にとっては唯一の父という場所を占める存在だから、今更実の父だって言われても。

ましてや亡くなったなんて現実を突き付けられてしまった私はどうしていいのかわからなかった。

『…小山内竜臣さんが亡くなったって連絡が来た』

そう告げて、弥恵さんから届いた葉書を見せた私をそっと抱きしめてくれた母さんの暖かさの中で思わず泣いてしまった。

その涙の理由はよくわからないまま。

ほんの少し感じたのは罪悪感。
それまで我が子同然に愛してくれていた有二ぱぱがいるにも関わらず、実の父…会った記憶も愛された記憶もない人が亡くなった事に涙してしまった驚きと罪悪感。

「…どうして、今頃…」

そう…それまで何も繋がりを持とうとしなかった人なのに…。
今更連絡もらっても…。

どう気持ちをもっていけばいいのかわからないだけ。
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