溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
じわじわと広がる浮ついた喜びに、思わず緩んでしまう口元を隠す事もなく。

手元の婚姻届に必要事項を記入した。
意外に落ち着いて書いている自分がなかなか不思議だけど、憧れる事も少なくなかったこの瞬間に浸りながら。

濠の妻になるんだな…。

先週までは、別れて離れて違う人生を送る覚悟を決めていたのに。
つらくて寂しくて体中が痛い毎日だったのに…。

大逆転。

…今、心底生きてる事が嬉しい。
濠と結婚するのがこんなに嬉しい。

まだ…濠に聞きたい事…お見合いの事とか…
あるけど。

いいや。大好きだし…。離れられないし。
濠が私を離さないし。
濠にもっと抱かれて愛されて、抱いて愛したい。

…いいや。

その気持ちだけで。

ふふふ…っ。
笑ってる私が…嬉しい。

「これで大丈夫かな。
印鑑は、今ないから家で捺印します…」

そう言って。

書き終えた婚姻届を弥恵さんに向けて。
にっこり笑いながら。

「保証人に…お願いします」

頭を下げた。
何の抵抗もない。
弥恵さんと知り合って短いけれど、父を愛してくれた…幸せにしてくれたこの人に対しては感謝しか浮かばない。
私を母に取り上げられて傷ついた孤独な心をほぐしてくれた弥恵さんが望んでくれるなら…こちらからお願いしたい。

「…本当にいいの…?
私が透子ちゃんの門出に参加させてもらっても
竜臣くんの代わりに…署名してもいいの?」

浮かぶ涙が今にも落ちそうなまま、嬉しさに顔を紅潮させている弥恵さんに、私は大きく頷いた。

「もちろんいいです。
濠も有二ぱぱも粋なお願いをしてくれて…惚れ直しました。

それと…代わりじゃないです」

「え…?」

「署名は父の代わりじゃない…。
弥恵さん自身にお願いします。
父を幸せにしてくれた弥恵さんにお願いします」

ゆっくりと頭を下げるこの瞬間。

家族が増えた気がして、
幸せな気持ちが体中に溢れ出した。
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