溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
③
その晩も、いつものように濠の部屋に帰った。
引っ越して以来、一人で新しい部屋にいる寂しさが嫌で…ずっと濠の部屋に帰っている。
濠の存在を感じる事ができるこの部屋に一人で過ごす夜は、それでも寂しいけれど。
その寂しさはただ単純に濠に会えない寂しさと、濠と寄り添って生きていく未来への迷いと自信のない自分に対するマイナスだらけの感情。
そんな混沌とした想いを勝手にめぐらせて、濠の気持ちを勝手に推測して落ち込んで。
結果、濠との距離を作って…。
本当…。
ごめんなさい。
異動、引っ越し、大賞の授賞。
私の一大事を何も知らされていない事実をどう受け止めたんだろう。
愛してると伝えてくれて優しく抱きしめてくれる大切な恋人を裏切った私なのに。
どんな気持ちで私の行動を…裏切りを乗り越えてくれたんだろう。
今でもまだ私への怒りや虚しさは抱えたままだろうけれど、どれほど悩んで動いてくれてたんだろう。
今はベッドサイドに置かれている婚約指輪…。
照明に照らされてキラキラと主張するダイヤにうれしくなる…。
指輪の用意をする時何を思ってた?
怒りはなかった?
すっぽり合ったサイズは私への愛情の強さ。
そして、指輪に並べている大切な大切な。
『婚姻届』には、家に帰ってくるなり捺印済み。
何のためらいもなくあっさりと押してしまった後で、昔は婚姻届に記入したり捺印する場面を想像してはドキドキと胸ときめかせて憧れてたのに…。
いざその時になると、大好きな人と一緒に生きていける保証書を作成するようで、穏やかに幸せを噛み締めて、ただ単純に進めていく作業。
その単純作業がなにより嬉しい。
何も考えずに幸せになるために捺印する軽い動きがしみじみと嬉しい。
この用紙を用意してくれた時…どんな顔してたの?
濠にとっても…当たり前の単純作業だったのならいい…。