溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
何も前向きに考えられなくて、ただ毎日を仕事をする為だけに生きていて、このまま気持ちをどう整理しようかと途方にくれていた。

もともと感情の起伏を大きく出さない私だから会社で困る事はなかったけど、普段と同じ表情の下で、心は殆ど壊れていた。
日々をこなすだけで精一杯。

濠が戻ってくるまでに心を修復しないと、また余計な心配をかけてしまう。
でも、父から私に向けられていた愛情を知ってから抱いてしまう自分に対する幻滅。
どうして父を私の人生に関わってもらわないままに手遅れにしてしまったのか…。

そんな重い気持ちは簡単に拭えなかった。

葛藤と言えば言葉はきれいだけど、単に足掻いて足掻いて。
もう父の人生を取り返す事ができない現実から逃れられないまま仕事をしていた…。

そして。

もうすぐ濠が出張から帰ってくるという頃に目に入ったのは。

会社に華々しく掲示されていたポスター。

それは、『設計デザインコンクール』の作品募集のポスターで…。

父が人生や生き方を曲げてまで…私の命の為に参加してくれたコンクール。

あぁ…どうしようもなく。

動けなくて、目が離せなくて。
募集要項を頭に入れながら…ふるふる体は震えて涙が溢れていた…。

会議室前の掲示板にくぎ付けになった私は、その瞬間から走り始めていた。

コンクールで大賞をとる為に気持ちは走り出していた。

それまで興味もなかったコンクールという苦しく高い壁が身近に迫る窮屈さを受け止めながら。

父の想いや葛藤を知る事ができるような気がして、コンクールの参加を決意した…。

去年の年末近く。

すっかり変わった仕事への意気込みに気づいた濠の怪訝そうな様子に答える事なく…私のコンクールへの挑戦は始まった。
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