溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~



木曜日の朝。

慣れてきたようなそうでないような緊張感の中で今日の宿題を開封する。

出勤の準備を終えて、ソファーに腰掛けて。

開いた中には、いつも通りの一枚の紙。

『婚約指輪を忘れずにはめて、緊張しないで頑張れ。
俺がついてる。
綺麗な写真撮ってもらえよ。

愛してるよ、奥さん』

…濠…。

どこまで私の事を知ってるの?
緊張するなとか、綺麗な写真撮ってもらえとか。
私のスケジュールをどれだけ把握してるんだろう…。
多分…相模さんから予定を聞いているのか…。
そうだと思うけれど。

出張前の慌ただしい中で、いつ私への宿題を準備したのか…。

ここ数日色々と考える事ばかりで振り回されていたから、今この宿題を読んでも右往左往しない自分に気づいて苦笑してしまう。

濠の思うがままに育てられてきたこの10年を振り返っても、この数日の濃さには叶わない。

ふっと小さく息を吐いて
左手の指輪を朝日にかざしてみる。

これでもか…と存在を主張しているダイヤモンドはまるで濠の意地悪な表情を思い出させるように輝いてる。

眩しい光に反射する輝きでしばらく心を癒して。

「とりあえず…平常心…。頑張ろ…」

よしっと気合いを入れてみる。

軽く暴れてる鼓動の理由を…とっくに知っていたらしい濠。
あーぁ、側にいて欲しかったな…。

人前に立つのが苦手で、いつも当たり障りのないポジションで生きている私。
目立ったり注目を浴びたりって…拷問以外の何物でもないけれど…。

今日は避けられない。
逃げたいけど逃げられない。

…記者会見。

コンクールの受賞者全員が揃っての記者会見が今日行われるから…緊張してる。

そんな私の状態を見越していたらしい濠の宿題。

大切に封筒に入れて、鞄にしまった。

気のせいだろうけど、ほんの少し気持ちが落ち着いて鼓動の音もおとなしくなったような…。

ふふっ…。

軽く笑いながら、離れていても濠に抱きしめられてるような…そんな温かさを感じてる…。
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