溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
共同記者会見は、毎年建築協会の会議室で行われる。
マスコミの記者達の質問やフラッシュを浴びて、普段は使わない感情や緊張感。
筋肉でさえも固まってしまった。
『これからも、精進していい作品を作っていきたいです』
そう言ってた自分しか記憶は残ってなくて。
気づけば会見は無事に終わっていた。
控え室にぼんやりと座りながら、まだ残る体中の緊張感に浸る…。
ちゃんと、終わったんだよね…。
安堵感に少しずつ包まれながら、ようやく周りを見回してみると。
「どうも」
じっと私を見ていたらしい男性と目が合った。
はっと驚いて、見返す私に軽く会釈したその男性は、私と同年代の…
「あ、吉井新」
思わず呼び捨てにしてしまって、慌ててしまった。
「ご…ごめんなさい。
いつも雑誌で見る顔が目の前にあるからつい…」
何度も頭を下げて謝る私に、くくっと小さく笑った顔も、雑誌によく載ってる笑顔。
「わぁ…嘘みたい。
吉井新…さん…に会えて」
「…そんなに喜ばれても困るけど…俺プレゼンテーターとして、さっき花束渡したけど…気づかなかった?」
怪訝そうに首を傾げる顔がじっと私を見つめていて、少しドキドキする。
「あ…そう言えば…何となく…」
遠くぼやけた記憶をたどってみると、今目の前の顔が私に笑顔と花束を渡してくれたような…。
壇上で緊張している私に拍手が浴びせられながら…。
「思い出したか?…透子ちゃん」
「…え?」
不意に悪戯っ子のように笑って、そう私を呼ぶ。
妙に親しげな言葉に戸惑ってると。
「…いや。いいんだ」
「あの…」
「ん…いや、ただ…似てるなって」
「え…?似てる?」
吉井さんが言ってる事がよくわからない。
雑誌でよく見る端正な顔は真面目に何かを言おうてしながらも、少しためらいがちに見える。
「吉井さん…?」
「…透子って…そう優しく話してたよ…小山内さん…」
はっと目を見開く私に、何かを思い返すような遠い目の吉井さん…。
父を知ってる…?