溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
そして、気持ちが揺れて整理がつかないままに。

食事会が始まって、たまたま吉井さんと並んだ席。
吉井さんは、これまでの実績や人間関係の広さを感じさせるかのように多くの人と挨拶を交わしていた。

控え室で私に見せた甘い雰囲気もなくなって、普段雑誌やテレビで見ているような笑顔を浮かべて私にも接してくれていた。

「吉井に口説かれてないか?」

会も終わりに近づいた頃、吉井さんの隣に座ったのは相模さん。
コンクールの審査員をしている相模さんを会社以外で見る機会が増えて、わかってはいたけれど、偉大な人だったと実感する。

大賞を史上最年少でとって以来の仕事ぶりは知ってるけれど、コンクールの開催を仕切っているのが相模さんだとはあまり知らなくて、今回自分が大賞をとって。

渦中に巻き込まれながらじわじわと相模さんの凄さを理解していった。

「吉井は仕事はできるけど、まっとうな恋愛してないからな」

苦笑しながら。
言葉は厳しいけれど、吉井さんに向ける視線は温かさが感じられるのを見ると、二人はかなり親しいんだろう…。

「葵ちゃんと幸せボケが長いくせに、人の恋愛とやかく言わないで下さい」

大きくため息をついて、吉井さんは軽く相模さんをにらんでいる。

「幸せボケか…。
いいな、それ。葵にも教えよう。
あいつも俺に負けずボケてるからな」

「…相模さん、彼女驚いてますよ」

顔を私に向ける吉井さんは、苦笑していて。

「仕事中の顔と葵ちゃんの事話す顔に差がありすぎ。
建築界のカリスマって威厳まるでないし」

「そう羨ましがるなよ。お前だって、そのうち幸せボケにしてくれる女が現れるさ。
な、透子ちゃん。
真田くんも、かなりボケてるみたいだしな。
結婚するって嬉しそうに言ってたし」

からかうような顔を突然向けられて、どう言っていいのか…。

「あ…はい。私もボケてます」

あれ…。
こんな事言うはずじゃないのに…。
相模さんにからかわれて思わず。
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