溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「透子ちゃんと真田くんが付き合ってるなんて知らなかったよ。

大賞もとって結婚もして。
なかなか忘れられない年だな」

仕事中の厳しい雰囲気の相模さんと違う穏やかな表情と声。
もともと社内外での高い知名度から、ある程度はわかっていたけれど、思ってた以上の仕事への熱い思いについていけるのか不安だった。

それでも、こうして優しく接してくれると、仕事でもちゃんと受け入れてもらおうとやる気が出てくるから不思議。

「…真田くんは、大賞の授賞式には来るんだろ?」

「あ…はい。毎年担当なので…今年もきっといると思います…」

そう答えながらも、大賞の事をちゃんと濠に報告できてないせいか、声も段々小さくなっていく。

あれほど秘密にしようと躍起になってたのに、今は濠に話したくて仕方ない。
大賞の事や引っ越した事…。
色々話して、濠が黙ってた事も聞きたい。

お見合いの事だけど…。
そうだ、お見合いの事…まだ何もちゃんと聞いてない…。

彩香ちゃんが関係してるみたいな事を言ってたし彩香ちゃんのお母さんがお医者さんで…って言ってた…?

毎日荒れ荒れの出来事ばかりが一気に私を包囲して、なんだか慌ただしくて。
落ち着いて考えたり辿ったりができなくなってる。

とりあえず。

濠が帰って来たら、お見合いの事ちゃんと聞いてみよう。

ふわふわとしたお酒の余韻の中でぼんやりとそんな事を考えていると、

「で、授賞式にはご両親も呼ぶんだろ?」

ごく自然にそう聞いてくる相模さん。

「あ、はい…来たいと言ってるので多分…呼ぶと思います」

「お父さんが載ってる雑誌見たぞ。カリスマ美容師だって?
葵も一度予約を入れたくて電話したら半年待ちって言われてがっかりしてた。
父親といい娘といい、有名人だな。
ヘアスタイリストだってデザインの力は必要だしやっぱり遺伝なのかな」

さらりと言ってる相模さん。

でも、隣にいる吉井さんは複雑そうに眉を寄せて私に視線を向けた。

…今、きっと父の事。
小山内竜臣の事を考えてるんだろう…。
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