溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~



その夜、会がお開きになった後。

『飲み直さないか?』

吉井さんに誘われて、いつも行くというお店に連れて行かれた。

繁華街から少し離れた所にある居酒屋…。
と吉井さんは言ってるけど、趣のある洋館が目の前にどんとあって。

「中入ったらもっと驚くから」

くくっと笑いながら、扉を開けたその向こうには。

「は…っ。すごい」

思わず見開いた目で凝視する店内はパステルカラーが散っていて、あらゆる絵がかけられている。かなり個性的な仕上げ。

自由に描かれたとわかる絵が店内を彩る様子は、まるで美術館のよう。

「居酒屋には見えないですね。
でも…なんだかわくわくしてきます」

声も気持ちも軽くなる。

建築を専攻している絡みで、あらゆる絵や美術品に触れる機会があった大学時代の気持ちを思い出した。

「この店、透子ちゃんの会社の昴に教えてもらったんだ」

「え、昴…?」

「そう。相模さんと仕事した時に一緒に来てたのがきっかけで仲良くなったんだ。
まだまだガキのくせに色々遊んでたのか、妙に
詳しいんだ。…仕事以外で」

最後の言葉は流しておこう…。
確かに遊んでた噂は私の耳にも入ってるし…。

「あいつももうすぐ結婚だろ?
ようやく落ち着くか。
いわゆる『幸せボケ』に仲間入りだな」

カウンターに並んで。
二人でいると、周りの視線が気になるけど、そんな事はお構いなしに話す吉井さん…。
一応顔も名前も世間に知られてる人だから…。

注目を浴びるってこういう事なのね…。

「吉井さん…チラチラと見られてますよ」

小声で囁くと、

「もうすぐ…授賞式が終わったら透子ちゃんだって同じ状況だな。
そのうち慣れるさ。

…小山内さんだって、きっとそれを乗り越えてきたんだろうし」

感情を抑えた声にはっとなった。

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