溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~



家…とは言ってもやっぱり濠の家に帰ったのは、既に日付も変わっていて早く寝なきゃ…と焦る頃。明日も仕事が控えてるから、そんなに夜更かしもできないけれど。

それでも高ぶった気持ちは治まらなくて、お風呂に入ってゆっくりしてもアロマキャンドルに頼ってみても効果はなくて…。

気付けばまた。

吉井さんに貰ったファイルを眺めている。

本当にたくさんの物件が収められていて、私にも懐かしい物も幾つもあってなかなか目が離せない。

吉井さんが教えてくれた事も衝撃的すぎて…自分の中でまだ消化できずにいる。

どうして父が私の仕事に詳しかったのか…。

それは、相模さんの奥さんの葵さんが、逐一父に情報を流していたかららしい。
もともと相模さんの部下だった葵さんは、退職した後も社内の人達とは繋がりがあった。
そして、設計部の知り合いから、私の仕事について教えてもらっていたらしい。

父は葵さんから聞いた情報に従って、私の手がけた物件を見に行っていたと…。

そう吉井さんは教えてくれた。

『葵ちゃんは、小さい頃に両親を事故で亡くしているから、子供を想う小山内さんの力になりたいって思ったんじゃないかな』

相模さんにも秘密にして。私に関する事を教えていた。

ふっと息を吐いてぼんやりと考えてしまう。

ベッドに寝転んで、ファイルを見ながら。

はっきりと浮かばない父の面影をたどるけれど、正直…ちゃんとしたイメージにならない。
会った記憶もないから。

せめて、一度でもまともに会った事があれば、どんな気持ちで私の作品を見てくれていたのか推測できるのに。

父が私を恋しがってくれたり、仕事を見守ってくれていたり…。

事実はわかるしありがたいし…幸せだと思う。
離れていても大切に思っていてくれていた…。

それだけで、生まれてきて良かった…と。

でも、父はどんな気持ちで私の仕事を追っていたんだろう…。偶然自分と同じ道に進んだ娘の事をどう思っていたんだろう…。

ぎゅっと目を閉じる。
なんだか切ない…。
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