溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~



会議室に入ると、椅子に腰掛けて机に並べられた何枚かの写真を食い入るように見ている部長。

設計部のトップとして指揮する真木部長は、会議室に入った私に気づくと途端に眉を寄せた。
あからさまに不快な表情を向けられて、思わず立ちすくんでしまう。

背後の相模さんを見ると、相変わらず厳しい様子で私を見ている。

「あ…あの…何か…?」

恐る恐る声を出す私に。

真木部長は一枚の写真を手に取って私に見せた。

は…?何…?

近づいて、そっと見たその写真。
まず目に入ったのは… 

「私…?…と、吉井さん?」

二人…私と吉井さんが顔を寄せ合っている。
横顔だけど、はっきりと
誰だか認識できる。

涙目で俯く私を気遣うような表情で優しく見つめる吉井さん。

あー、夕べ二人で飲みに行った時に撮られた…。
写真の背景に映えるパステル色の絵。

あの美術館のような店の内装がやけに目に入る。

部長の手元にある他の写真も、全て夕べの二人を撮っている…。

「これ…どうしたんですか?」

想像はつくけれど、一応聞いてみた。

「午前中、バイク便で届いたよ。明日のスポーツ新聞に載せるらしい。

…で、どういう事だ?
吉井新のような有名人ならマスコミが狙ってるのわかってるだろう」

ため息まじりの声に、疲れも感じられる。
それほどにショックを受けるものなのか…と逆に私が首を傾げてしまう。

「部長…吉井さんとは話題を提供するようなものは何もないですよ」

あっさりと言う私だけど、部長も相模さんも苦笑するだけ。

「…何もないってのはわかってる。
もうすぐ真田くんと結婚だろ?婚約指輪も写真に写ってるし、透子ちゃんを知ってる人間なら、何もないってわかる。

でも、そんな事情も何も知らない読者が見たら、きっと二人はできてるって思うぞ」

「で…できてるって、まさか…吉井さんみたいな有名人と私みたいな平凡な人間が並んでも、何も思わないですよ」

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