溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「先週、コンクールの大賞をとったと公表されてからは、もう平凡なままじゃないんだ。
新と同じとは言わないまでも、今はもう注目されている有名人の一人なんだ。
マスコミに狙われるような事には気をつけろ…」

どうしようもないんだ…という意味が感じられるようなため息をつく相模さんは、私を責めるわけでもなく、苦々しそうに写真を見ている。

「俺や…葵も、マスコミに狙われた事はあるから、大変な事はわかってるんだ。

嘘でも真実のように記事を作るしな…。

透子ちゃんには、煩わしさから離れて仕事に集中して欲しい。

だから、これからは気をつけてくれよ」

「はい…。気をつけます」

優しく諭してくれる相模さんの言葉に頷きながらも、あまり実感はない。
大賞をとったとはいえ、私の中での変化といえば異動して相模さんの下で働けるようになった事くらい。
それはかなりの名誉だし望んでる人がたくさんいる夢みたいな事だけど。

まだ、私は注目されるに値する建築士でもない。
今までとは変わらない一般人のままだとしか思えない…。

けれど、相変わらず気持ちの落ちている真木部長と相模さんを見ていると、自分の想いとは逆に進む状況を感じずにはいられない。
私の感覚と世間のそれのズレが広がっていくような。

本当に、人生は思うようには動いてくれない。
そんなの、小さな頃から慣れてるのに。

…しばらくぶりに感じるもどかしさ。

長い間、濠が私の側で上手に私の生きやすい毎日を作ってくれていたから。
濠のガードの中でぬくぬく守られて過ごしていたから。

ただ自分のペースのままに笑えていたと…改めて気づく。

でもこれからは、どうしようもない時間の流れと周囲の進み方に折り合いをつけながら、生きるしかない…?

…コンクールで大賞を取る事の代償にしては…。

大きすぎる…。

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