溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
苦々しく話す相模さんにはきっと、マスコミに追われてつらい時間を過ごした経験があるはず。
奥さんの葵さんにしても亡くなったご両親が著名な建築家だったから…。
夫婦揃って昔から注目されている。

そんな相模さんの言葉には重みがあって、笑い飛ばすなんてできない。

会社に対する保身や自分への影響を気にして私に厳しく話しているわけでなく、単純に経験から滲み出る言葉だとわかる。

「大賞をとるっていうのは、その先に待っているしがらみや壁を乗り越えなきゃならない運命も背負うって言うことだ。

透子ちゃんがそれをうまく受けとめていかなければ、確実に建築家としての将来はない」

私だけでなく、昴にも時折視線を向けるのはきっと。

何年か先に、昴も大賞をとると周囲が期待しているから…。
それは間違いないと思う。

わかっているのか、昴も真剣に聞いていて表情も堅い。

「実際に…仕事に影響が出た人の話は…昨日吉井さんから聞きました。
吉井さん自身はマスコミの事は諦めて気にしないで仕事してるらしいですけど」

ぼそっと話しはじめた私に相模さんは眉を寄せる。

「影響が出た人って誰だ?」

「あ…あの…」

何気なく言ってしまった私の言葉に敏感に反応する相模さん。
変わらず堅い表情に、神経質さも見える。

「…相模さん…?」

「あ…悪い。新から聞いたって夕べか?」

「はい…。昨日初めて吉井さんに会って…そんな話もしてくれて…」

たどたどしい言葉しか出ない私は、相模さんがどうしてそんなにこだわるのかわからずに。

ただ、考えこむ相模さんの言葉を待った。

「…新が同業の女を誘うなんて珍しいなと思ってたけど、仕事の話までするなんてな…。

よっぽど気に入られたんだな…」

「は…?」

「いや…あいつが噂になる女はみんな同業以外で、仕事離れたら一切仕事の話はしないから。

透子ちゃんは特別に想われてるんだろうな」

私の反応を気遣うような声だけど、少し戸惑いも感じてしまう。

そうじゃないのに…。
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