溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「吉井さんは…私を気に入ったとかではないんです」

何か誤解があるように相模さんは考え込んでいてほんの少し慌てた。

女性との噂に事欠かない若手の建築士の吉井さんがどういう女性を側に置くのかよくわからないけれど、とりあえず私は吉井さんにとっては全く恋愛対象じゃないし、ただただ…そんな誤解は申し訳ない。

「吉井さんは、私の父の事をいろいろと…教えてくれていただけで。

父を尊敬していたらしくてそれで…」

本当なら、父と私の関係を話すのは控えたほうがいいのかなとも思うけれど、吉井さんとの写真がマスコミに撮られて、相模さんにも誤解をされてしまったせいで。

思わず口に出してしまった。

「…父って…?」

怪訝そうに目を細める相模さん…。
隣の昴も訳がわからないような顔をしている。

その二人にだけ聞こえるくらいの小さな声で…それでもはっきりと。

「吉井さんの設計事務所で以前働いていた小山内竜臣…は、私の実の父親です」

その言葉をためらう事なく言えた自分に少し驚くけれど、父の名前を口にする事に何の抵抗も感じない。

「小山内竜臣って…去年亡くなった…?」

驚く相模さん。

「父親だと知ったのは、亡くなった後なのでどういう人なのかは…よくわからないんですけど。
相模さんはご存知ですか?」

「あ…あぁ。小山内さんは葵の育ての親の設計事務所にいたし…それに、建築かじってる人間なら誰でも知ってるだろ」

呆然と呟く相模さんは、まだ信じられないみたいに強張った顔で私を見ている。

「…小山内さんが…父親…」

「相模さん…?」

私を見てるけれど、何か他に意識は飛んでるような…何かを思い出しているように。

私の向こうに見えないものを見つけようとさ迷う視線…。

多分…父…小山内竜臣を思い出してるんだろうな…。

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