溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「小山内さんは…確か一度離婚してるって聞いていたけど…」

思い出すように問いかける相模さんに、頷いて。

「はい。私が生まれてすぐに離婚したんです。
その後母が再婚した事もあって、父は私に会わずに…そのまま」

亡くなった…とは言葉に出さずに濁して目を伏せた。
私のこれから続く人生の中で絶えず背負っていく後悔の重みを感じる…。
父に会えず…心を通わす事ができなかった事への重い重い後悔。

「…ちゃんと会ってみたかった…」

ぼそっと出てしまった言葉は震えていた。

「透子ちゃんが娘か…。俺が知ってたら会わせてたのにな…。
葵をかなりかわいがってくれてたし…俺の子供達とも優しく遊んでくれたよ…。
葵には、身内に似た感情を持ってたけど…透子ちゃんを思い出してたのかもな」

「相模さんは…父と…」

「かなりお世話になったよ。
建築士というだけでなく人間的に見習うところが多くて…。

そうか…娘か…」

ぼんやりと呟く相模さんは、はっとしたように視線を私に向けた。
ぐっと結ばれた口元からは大切な何かを思い出したように深い吐息が漏れる。

「娘がいるのは聞いてた…。葵とたいして歳が違わなくて…手放さなきゃならなかった…で、心臓が悪いっていう娘が。

それって」

まさかそうなのか…?

と瞳が私に問いかける。

父は、私の事を隠すでもなくちゃんと口にしていてくれた。

私の存在を認めて他人にも話していたって知ってじわじわと嬉しくなる。

夕べ吉井さんから聞かされた事も含めて、父がどれほどの想いを私に向けてくれていたのかに気付いていく。

気付くにつれて気持ちがほぐれていって、会った記憶もない父の存在をとても近くに感じてしまう…。




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