溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~



「人事から、週末の引っ越しの事で電話ちょうだいって」

昼休みが終わって、部署に戻った途端に声をかけられた。
向かいに座る先輩の佐伯さんに

「わかりました」

と言いながら、一気に気持ちが落ちていくのを感じた。

あと三日で引っ越す予定。

と共に、勤務地も異動となる。
デザイン本部のある本社への栄転は、社内で設計デザインに携わっているなら誰もが望んでいる。

私だってその例外ではなくて、来月で30歳になる自分に贈られた、一足早い誕生日プレゼントのように思える。

大学時代から目指していたこの会社で働けるだけでも夢のようなのに、本部への異動はありえない奇跡。

一生分の運を使いきったんじゃないかと、ほぼ放心状態。

「住宅設計のチームに配属だから」

さらに加わった奇跡。
希望どおりの仕事に携われる未来…。

プライベートとは正反対の右上がりの仕事の運気が、悲しい現実を考えなくてすむ手助けをしてくれる。

刻々と近づくその日…。

自分の人生から大切な人を一旦切り離すと決めたのは私なのに。

その悲しい日が目の前になって、涙しない夜はない。

仕事だけの人生に身を置く事を決めた途端に上昇した仕事運に苦笑しながらも…。

明るく見える未来にせめてもの慰めを感じている。

濠…?

あなたの未来も明るいものに…。

そう願う私の気持ち…。
私の本音だと…信じたい。
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