溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
消印にある年末の日付が気になった。

思い当たる透子の変化。
ちょうど去年の年末に、一週間のイタリア出張から帰ってきて感じた違和感を思い出す。

もともと仕事に対してはかなりの真剣さと熱意で取り組んでいたけれど、それまで全く興味を持たなかったコンクールに作品を出すと必死で製作に励んでいた。

『大賞とりたいな…』

何度か漏らした透子の言葉には、長い付き合いの俺でも初めて感じる欲が浮かんでいた。

お客様に喜んでもらえればいい…

そう言って幸せそうに仕事をしていた透子の穏やかな表情からは考えられないほどに張り詰めて、コンクールに向き合っていた。

俺がイタリアに行っている間に変わってしまった透子。
俺に対する気持ちには変化はなかったけれど。

抱く度に『好き…』と呟く言葉に切羽詰まった感情も見え隠れし始めた。

何がどう変わったのかわからないままに。

俺はただ、透子の側にいるしかできずにいた。

実の父親の死は、あの頃の透子に何か影響を与えたのか…?

不安で息を殺しながら、そっとハガキをドレッサーの上に戻して。

透子が帰ってくるまでに気持ちが落ち着く事を祈った。


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