溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
愛は過去から未来へ




私が『真田透子』になって、その事実を公表して以来。
世間があれだけ気にかけていた吉井さんと私との熱愛報道はすっかり忘れられたかのように消えてしまった。
吉井さんにとっては何度目かの騒動で、対応だって慣れていた。

『これから期待せずにはいられない才能を持った後輩です』

と、当たり障りのないコメントに私だけは恥ずかしく思ったけれど、すっと流されたその言葉の行く先は単純な鎮静化。

業界の中の吉井さんのポジションによるものと、私の結婚によって、あっけなく騒ぎは収まった。

『芸能界のスクープだって真実じゃない事も多いのかもな』

濠の感想は苦笑いとともに、しばらく二人の間に漂っていた。

でも、落ち着いたなってホッとしたのも束の間。
授賞式が近づくにつれて出る記事には私の出生にまつわる事。
特に、親子二代で設計デザイン大賞を受賞した快挙について詳しく出ていた。
親子二代受賞というのは私で二人目。

歴代受賞者の中で、吉井さんと並んで若手実力派と言われている仁科透さん。

相模さんの奥様の葵さんとは双子のお兄さんという関係で、今も精力的に仕事をしている。

私の父が働いていた設計事務所で仕事をしている仁科さんは、大賞の最年少受賞者でもあるし、亡くなったご両親がかなり有名な建築家だった事もあって。

受賞自体世間の注目を必要以上に浴びていた。
私とも大して年齢差のない仁科さんが受賞した当時、既に建築の勉強をしていた私にとっても衝撃的だった。

仁科さんが大賞を受賞した作品は実際に見る事もあって、その才能に言葉を失ってしまった。

海外で仕事をした経験も仁科さんの武器になっていて、今ではその名を知らない業界人はいない。

吉井さんと違って既婚者だという事もあって、派手な噂もないし、落ち着いたイメージの私にとっても憧れの建築家。

そんな雲の上の存在ともいえる仁科透さんと、ようやく人並みに建築を生業として生きていけるかも…という位置の私が。

名前を並べられる機会が増えてしまった。
雑誌やテレビに特集が組まれているのを目にする度に恥ずかしくて体温が一気に上がっていくような気がする。

本当…実力も実績もまだまだ仁科さんとは比べものにはならない私なのに。

< 281 / 341 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop