溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
②
授賞式が始まるまで、控室でメイクを直してもらった。
仁科さんと過ごした短い…とても濃いひとときで流した涙の跡を消して、普段よりも丁寧なメイクに包まれた顔は、どこか緊張感があふれている。
鏡越しに私を見つめながら、髪型を整えてくれる有二パパの表情も見慣れず真面目でぎこちない。
「似合っていて良かったよ」
「…何が?」
鏡を通して有二パパを見ると、ほんの少し緊張を解いた瞳で私を見つめていた。
「このスーツ、よく似合ってるよ。
透子ちゃんにピンクは映えるから…」
「ありがとう…。
着心地もいいし、大切に着るね。
…舞台に立って服に負けてるって思われなきゃいいけど」
肩を竦めて冗談まじりに 言う私に、小さく息を吐いた有二パパ。
「大丈夫だよ。透子ちゃんは綺麗だから。
賞をとってから、才色兼備ってもてはやされてるだろ。
俺も嬉しいんだから…もっと自信持ってろ」
「ん…才色兼備って、かなり大袈裟だけど、有二パパにそう言われると落ち着く」
ふふっと笑うと、有二パパも鏡越しに笑い返してくれる。
50代後半とは思えない若い笑顔は「カリスマ」と称されるに相応しい格好良さ。
美容師という職業柄か、見た目も洗練されていて、美容師としての腕と共に容姿も注目を集め続ける自慢の人。
仁科さんとの話を終えて控室に戻った私の顔を見た濠が、授賞式会場にいた有二パパを慌てて連れてきてくれた。
「せっかくだから、化粧もプロにしてもらえ。
…側にいてやれなくて悪かったな。
仁科さんから二人にして欲しいって言われたから遠慮したんだ。
もう、離れないから」
そう言って、まだ赤い目のままの私をぎゅっと抱きしめてくれた濠も、不安げに瞳は揺れていた。
今日の授賞式の責任者ともいえる濠は、ずっと忙しそうにしていて。
ホテルに着いてなかなか顔を会わせられなかったけれど、ようやく控室を覗いてくれた濠が見たのは、仁科さんと会った後動揺していた私。
そして抱きしめてくれて。