溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
ふっと体が沈んでいく感覚が、私の意識を呼び戻していくのがわかる。
さ迷いながら安らかに開放していた体を包み込む温かさ。
背中越しに伝わる鼓動がそれを何だか教えてくれる。
まだ眠りの中で小さくなっている体がぎゅっと抱きしめられる幸せな感覚が、少しずつ現実のものとなってくる。
胸元に回された手を無意識に握りしめると、求めていた強さが応えてくれて、一気に目を覚ます。
「あ…シャワー浴びた…?」
「あぁ、とりあえずさっぱりしてきた。…わかるか?」
「うん。同じバラの香りがする」
「…だな。落ち着く」
浅い眠りから覚めた私はベッドの中でくるりと向きを変えて、濠に向かい合った。
まだ少し濡れてる濠の髪を梳きながら大きく息を吸うと、もう体の一部になっているバラの石鹸の香りに満たされてホッとする。
ずっと昔から愛用しているこの香りは、濠が私を見つけてくれた再会の時にも身にまとっていた大切な香り。
濠から離れようとした時に、この香りからも離れてしまおうとしたけれど、心が本当に寄り添うようになって、新しい家に引っ越した後。
『俺がバラの香りっておかしいか…?』
と少し照れながらも、濠が自ら買い込んできてくれた。
私だって、この香りには濠との出会いから再会までが詰まっていて、なんども勇気も与えてもらった。
大切な香りに濠が気付いてくれていた事が嬉しくて、濠に負けないくらいに私も買い込んでしまった。
おかげで私達はいつもバラの懐かしく幸せな香りに包まれている。
そんな香りで抱きしめられて目が覚めるなんて、仕事の疲れも何もかも忘れるくらいの極上な気分。
「お帰りなさい。いつも遅くまで忙しそうだね」
「まあな、俺も役職が上がるから仕事も増えたし、もうすぐクリスマスだからな。
いろいろとイベントもあるし」
ふうっと小さく息を吐いて笑う濠の顔には、やっぱり疲れが見える。
出世するのはいいけど、体が心配。