溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「遅い」

どう見ても不機嫌な顔と低い声。
部屋から出てきた濠は、じっと私を睨みながら

「飲んでる?」

「あ…うん。少しだけ」

私がお酒を飲む事をあまり良く思わない濠の表情は歪んで、軽いため息。

「大丈夫だよ。酔ってないししっかりしてる」

濠の側に近づいて、顔色をうかがうように囁くと。

「顔真っ赤なのにか?」

「え…?」

「頼むから、そんな顔…俺のいない所で…」

切ない声と一緒に伸びた手に抱き寄せられて、あっという間に濠の胸に頬を寄せていた。
背中に回された腕は緩やかで、すぐに離れる事もできるけれど。

大好きなこの空間から離れるなんて。
ましてやお酒も入ってる今は、自分の力だけで離れるなんてできない。

「ごめん…」

濠の胸にそう呟くと、回された腕の力が強くなった。

ふふっ…。

「濠…」

そのまま、体を濠に預けたままで目を閉じてると幸せな想いが満ちてくる。

「じゃ、また明日…いや今日か。
会社遅れるなよ」

あっ。

顔を上げて振り返ると、
呆れた顔で笑いを堪えている喬が帰ろうとしていた。

「あ…ごめん。気をつけてね」

すっかり喬の存在が抜けたままに濠に浸っていた。
そんな自分が恥ずかしくて、きっと更に赤い私の顔。

背中越しにヒラヒラと手を振ってエレベーターに向かう喬を見送っていると、濠に抱きしめられてそのまま部屋に入れられた。
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