溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
濠に抱えられたままリビングに連れてこられて、ソファにどさりと座らされた。
隣に座って、私の腰を引き寄せた濠は、軽く睨んでる。

「またあの男かよ」

「え…あぁ…喬の事?」

「いつも部屋の前まで送ってくるよな」

「いたっ」

私のおでこにでこぴんして、その胸に抱き寄せられた。

シャワーを浴びたのかな。私が使ってるソープの香りを感じて何だか嬉しくなる。

濠が私の部屋で暮らしているに近い状態の長い日々を思い出してしまって切なくもあるけど。

「あいつ…俺がいなきゃ部屋に上がり込んでたんじゃないのか?」

耳元に聞こえてくる低い声に、少し笑ってしまう。

「それはないよ。今までも、誰か他に女の子がいない時には絶対に送ってくれるだけで帰ってたもん」

「…へぇ…」

まだ何か引っ掛かるような声が子供みたいで、
思わずくすって笑ってしまう。

「…何?」

「あは…。ううん。
とにかく喬には彼女いてるから大丈夫だし。
私には濠だけだって知ってるし…妬かないで?」

だんだん小さくなっていく声を、ちゃんと濠は聞き取ってくれた?

普段自分の気持ちをこんな風に、濠をからかうような言葉で伝えるなんてしないから。

言ってしまった私が照れてしまう。

昔、聴力に問題のあった濠。
そんな昔の名残か、無意識に今でもなにげにはっきりと聞き取りやすいように話してしまうから。

こんなに小さな声で呟く自分には慣れてない。
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