溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~



「引っ越し、手伝いに行ってやろうか?」

社内のカフェコーナーで二人してコーヒーを飲んでいると、喬が聞いてきた。

薄い緑のストライプが入ったカッターシャツが似合っていて、営業マンには欠かせない爽やかな笑顔で話す姿を、近くにいる女の子達が意識しているのがわかる…。

「引っ越しは、業者さんが一気にやってくれるから大丈夫。
それに、その日仕事じゃないの?」

「んー。可能性ありだな。
お客の希望次第だしな…」

「ふふ…。お客様次第で夜中でも図面広げに行かなきゃいけないもんね」

住宅の営業担当には、自分で完全にコントロールできる時間は少ない。
飲食店や旅行関係のような業種とは違うけれど、サービス業に近い仕事。

「…濠さんには言ったのか?」

「あぁ…。言ってない。
っていうか、言わずに引っ越すから」

じっと見る喬と目が合わせられなくて、ほんの少し残っていたコーヒーを一気に飲み干した。

「なあ。長い付き合いなんだろ?
ちゃんと話した方がいいぞ」

「…うん」

「高校の時から一緒にいるなら人生の半分一緒にいるんだろ。
離れる前にちゃんと話せよ」

整った喬の顔が妙に真剣で、冗談で言葉を返せない…。
知りたくない自分の気持ちが胸にせりあがってきそうで…。

喬には曖昧に笑ったままそっと心の奥を閉じた。


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