溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「大丈夫だから…。
私はもう健康なんだから心配しないで。
濠こそ気をつけてね。
…お仕事頑張ってね」

濠の背中に回した手に力をこめると、私より強い力で抱きしめてくれた。

「透子…」

「…なに?」

「透子…」

「濠?どうかしたの?」

私を抱きしめたままに、首筋に感じる痛みと吐息。
いつも、出張に出かける時には。

意識してかどうかはわからないけれど、普段以上にあっさりと出かけるのに…。

今朝はなんだか勝手が違って戸惑ってしまう。
心なしか濠の体が震えているようにも思えるよ…。

「…宿題。出しとくから」

「え?」

不意に耳元に聞こえてくる言葉。
切ない声音が少し不安を煽る…。

「一日一つ。宿題を出してるから、ちゃんと解いて連絡しろ」

「は…?」

濠の体から顔を上げると、優しく笑う濠の視線とぶつかる。

「ちゃんと真剣に解いて」

わかったか?

と頭を撫でる濠は今まで見た事がないように穏やかに…笑っていて。
どこか泣いてるようにも見えた。

「寝室のドレッサーの上を後で見てみろ。
きっと俺がいない間寂しがってる暇なんてなくなるから」

何かを秘めた言葉に。

ただ見つめ返すしかできないけれど。
思い詰めてる濠の言葉に。

もしかしたら…。

知ってるのかな…。

私の決意を感づいてるのかな…。

謎を残したまま、深いキスを私に落として。

濠は出かけて行った。



< 53 / 341 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop