溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
俺の軽い言葉の意味がわからないとでもいうような尚志。

その手にある新聞を抜き取ると、一面を広げて見せた。

周りにいた同期達の怪訝そうな視線に思わず笑いが浮かぶのを我慢できない。

「何…?」

尚志の戸惑いに、悪戯気味な口調で。

「こんな賞とったから、仕事はやめられないな」

広げた新聞の左下に載せられた顔写真と見出しをみんなに見えるように差し出すと。

一瞬の沈黙の後、口々に話し出す同期達。

「設計デザイン大賞って…え?この綺麗な女が濠の彼女?」

「くくっ…。綺麗だろ?実物は10倍綺麗だぞ」

「何のろけてるんだよ。…へぇ…。大賞とったのか…。
すげえな」

大きく載っている設計デザイン大賞の受賞者発表の記事。
もちろん透子の写真が載せられていて。
内定の段階で相模さんから聞いていたとはいえ、
こうして記事を見ると、ようやく事実として実感するな。

思いのほか嬉しく感じる自分が誇らしい。

半端じゃない努力をしている透子の姿を長い間見てきた俺にも、受賞は心底嬉しい。

「じゃ、受賞式で俺らも濠の彼女に会えるな」

ふと思いついたように呟く尚志の言葉に、皆頷いてからかうような視線を俺に向ける。

「そうだな…」

受賞式がアマザンで行われる事は周知の事実。
透子が壇上に立つ姿を想像すると、思わず頬が緩む。

ただ、この受賞を祝う言葉を透子にかける事なくフランスへ行く事を思い出して切なくなる。

本当なら、誰よりも早く喜びを分かち合いたい。

< 57 / 341 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop