溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
とりあえず荷物が全て運び込まれても、何だか落ち着かない。
家具自体はずっと慣れ親しんだものばかりなのに
壁紙の色や天井の高さ。
部屋特有の匂いがまだ私の中にしっくりこなくて不安な気持ち。
「10階って見晴らしいいね。結構夜景も綺麗だろうね」
「…うん」
ベランダから喬と二人で
外を眺めていた悠里が部屋に戻りながらの言葉にも軽く頷いて。
それでも心はどこか上の空。
ぼんやりとしている私に怪訝そうに顔を見合わせる悠里と喬に気づいて慌てて笑ってみせる。
「…ごめんね。せっかくの休みなのに手伝ってもらって。
あとはぼちぼちやるから大丈夫だよ」
へへっと笑う私を心配そうに見遣る悠里。
いつもながら、私の気持ちをよむのがうまくて嘘はつけない…。
「本当に良かったの?
結局、濠さんには黙ったままなんでしょ?」
「あ…うん」
「引っ越し知らないままにフランス行って、帰ってきたら透子いなくなってて。
かなりショックだと思うよ」
どうしても厳しい口調になるのを抑えられないのか、悠里自身も悲しそうに口元を歪めている。
隣りの喬も同じように辛そうな表情で立っている。
「言ってないんだけど…」
小さな声で呟いて。
私はエプロンのポケットに入れていた封筒を取り出した。
悠里と喬に見せて、まだ雑然としているリビングのソファーに腰掛けた。
二人が私の前に座り込むと、その封筒を広げて見せた。
朝置かれていた濠からの
『宿題』
今日開封するよう書かれたその手紙の内容を見せると。
「え…?これって」
予想通り…顔を見合わせて戸惑う悠里と喬。
私もきっと同じ顔をしてるんだろうな…。