溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「透子は一体どうしたいんだ?」

私の手を離した喬が、声音を柔らかく抑えて聞いてきた。

けれど、眉間に寄せられた歪みが語るものは私への不快感。

「透子が濠さんから離れたいなら、ちゃんと話をして礼をつくせ。
今まで透子の側で守ってくれたのは濠さんだろ」

「私…離れたいわけじゃない。
濠を愛してるし側にいたい。
でも、濠の罪悪感を利用してつなぎとめておくのは…無理だから」

小さな声をなんとかつないで、目の前の二人に答えた。
ぐっと熱くなる目の奥からこぼれ落ちそうな涙をこらえながら。

「春頃…濠にお見合いの話があって…。
お見合いする事を受けたらしいの」

「え…?お見合い?」

驚く悠里に笑ってみせて

「そう…。
結局は今も変わらず私の側に居続けてくれてるから、お見合いはうまく進まなかったと思うんだけど」

小さく溜息をついて、何度も考えた事を整理しながら

「お見合いするって事は…私以外の人との未来を考えたって事でしょ?

…ショックだったけど

とうとう来たのか…って諦めちゃったから。

濠が自分の人生を自分で選択できる機会を奪っちゃいけないってわかってるから…」

最後の方の言葉は、泣き声に近くてはっきりと二人に伝わったのかわからないけれど、どうしようもなく大好きな濠を諦める悲しみを私が告げている事だけは伝わったのか…。

「透子…」

悠里の心配している表情と、怪訝そうにしている喬。

「濠さんが…透子以外の女と生きる人生を考えるなんて…おかしいだろ」

冷静に言う喬だけど。

濠には濠の自由な未来があるから。

罪悪感や責任感は濠と私の重荷にしかならないんだ。

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