溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
気に障る女が目の前でニコニコ嬉しそうにしていて。

『俺の病状知ってるのか?』

と、うまく話せないもどかしさの中で紙に書かれたり。
イライラをぶつけられたりした。

それでも、病気が身体だけでなく心までも侵食して、だめにしていく事をよくわかっている私は、ただ側にいたくて。

どんなに素っ気なくされても離れなかった。

『ほんと、変な女』

そう書かれた落書き帳を見せる濠が笑ったのは、初めて診察室で睨まれてからしばらくたった夕方だった。

夕食の前のほんのひと時。
少しずつ沈んでいく夕陽を眺めていた屋上のベンチ。

黙って過ごした時間を
思い出すと、15年経った今も鼓動が暴れてときめいてしまう。

長身で、痩せているけれど筋肉質の身体はまさしくスポーツマンの体。
偶然、鍛えられた腕に触れる度にドキドキした。

受験勉強にもかなりの時間を費やしていた。
志望校は教えてくれなかったけれど、過去問題を解いてる時、ちらりと見えた大学名は超難関校。
私には手も足も出ない有名大学だった。

スポーツもできて頭も良くて。

初恋未経験の私が、見た目だって抜群の濠を好きにならないわけがない。

日々気持ちが膨らんで、どんどん好きになるのを止めるなんてできなくて。

ただ、濠が勉強している喫茶室に並んで座って。

『大好き…』

と、呟いてた。

濠の耳には届かない事をいいことに、こっそりと呟いて自己満足気味に笑ってた。
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