溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
そんな気持ちなんて、健康な身体に産まれていればとっくに経験していたはず。

15歳までときめきもドキドキも一切遠い所にある感情で、学校に通っていても体調優先で無理は禁止。

数少ない女の子の友達とお昼休みに笑い合うくらいが唯一の年相応の生活だった。

小さな頃からそんな毎日を送っていた私にはそれが当たり前で、嫌だとも悩んだ事もなかったけれど。

『濠を好きになったかな…』

自覚した途端に芽生えた初めての感情が、私をどんどん戸惑わせた。

濠が勉強する隣で私も本を読んだり、好きな絵を描いたりする時間も、なんだか落ち着かなくなってしまった。

それまで気にならなかった病院以外の濠の生活も気になって、

『どこに住んでるんだろう』

『高校ってどこ?』

『普段は何をしてるの?』

『恋人…いるのかな…』

聞かずにいた事を聞きたくて聞きたくてたまらなくなってしまって、側にいてもそわそわ。

チラチラと見る私の視線がうっとおしいってノートに殴り書きもされて。しゅんとなったり。

それでも、濠の近くで穏やかに過ごす時間がとても気に入っていた。

そんな感情に右往左往する毎日に終わりが来たのは、手術の前日。

私は中耳炎で入院してる
と思っている濠にも、いよいよ本当の病状を言わなきゃって緊張しながら。

濠のいる喫茶室に入った瞬間。

きっと同じ高校の友達。
男の子と女の子達5人くらいとテーブルについて笑っていた。

落書き帳に言葉を書きながら話しているその様子に、私は身体が固まって動かなくなった。
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