溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
周りにいる濠の友達が、慌てて

『何言ってるんだよ。
濠がからかうなんてないだろ?
せっかく濠紹介してくれるって言ってるのに、ひどい事言うなよ』

低い声でそう言って私をかばうお友達の言葉にも

『…だって、濠には彼女いるじゃない。
誤解して好きになる前にはっきりと言った方がいいのよ』

はっきりと言われたその言葉に、気持ちが一瞬で固まった。

誰もその言葉を否定しない事が、濠に彼女がいる
のは真実だって教えてくれる…。

まばたきすらできない時間は、きっと数秒の事だったと思うけど、あまりに悲しい言葉は永遠にも感じた。

その時、私の手を掴む濠の手に力が入った。

『どうした?』

そう心配そうに私を見つめる濠…。

いつも側にいて穏やかな時間を過ごしてきたけれど…この目を独り占めするなんて無理なんだな…。

好きって自覚したばかりなのに…。
初恋と失恋を一気に経験するんだな…。

「私…診察あるから部屋に戻るね」

口の動きを読んだのか、
少し残念そうに笑った濠…。

『戻ってこい』

そう落書き帳に書いてくれたけど、首を横に振って笑った…。
ちゃんと笑えてたかな?

途端に離れた濠の手。
急に不安定になってしまった私の体はなんだか苦しい…。

『透子も…離れるんだな』

殴り書きの文字に訳がわからなくて濠を見ると

『透子の中耳炎は治ったんだろ?』

相変わらず殴り書き。

確かに中耳炎は治ったから…小さく頷いた。

『俺は用無しだな』

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