溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~



目が覚めると。

そこは病室ではなくて、見慣れたベージュの天井が落ち着いた気持ちを取り戻してくれる濠の寝室。

引っ越しの後片付けも中途半端に中断して、濠の部屋にやってきた。

新居には濠の存在を思い出して心温まる空気感も、二人で笑いあった声も何も感じられなくて…

濠が住んだ事もないから当たり前だし、最初からわかってたけど。

予想を遥かに超えて寂しくてつらい夜に耐えられなくて部屋を飛び出した。

タクシーで着いた濠の部屋に入った途端に包まれる慣れた空気の香り。
温度さえも濠に包まれているように感じた。

濠と再会してからお互いの家をずっと行き来している私達。
どちらかと言えば私の部屋にいる時間の方が長いけれど、それでも私の物はたくさんある。

というより、自宅と同じくらいに増えた服や靴…化粧品や鞄…。

いつでもこの部屋に安心して泊まれる。

その安心感は、濠がいる気配が圧倒的に強い事から感じられる。
ベッドに入ると濠に包まれているように落ち着くし、お風呂に私が置いた薔薇の香りの石鹸は、濠に出会った頃の切ない気持ちと…。

再会するきっかけになった大切な瞬間を思い出させてくれる。

夕べ、体中が空っぽになった感覚を抱えてこの部屋に駆け込んできて…。

改めて実感するのは、濠を本当に必要としている自分自身…。

濠から完全に離れて生きるなんて無理だとわかっているのに、濠の人生の為だっていい人ぶったから…。
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