溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
今振り返ると、どこか
こそばゆい子供じみた
大切な思い出。
必死で濠に向かって気持ちを傾けていた私の少女の頃。

でも、そんな甘い思い出も。

濠の中では長い日々を罪悪感で縛る原因となった悲しい瞬間。

あの日、倒れた私はそのまま手術室に運ばれて、運良く病院にいた担当の医師によって手術を受けた。

尋常ではない看護師や医師達の様子を見て、私の病気が簡単なものではないと気づいた濠は、ようやく聞こえるようになった自分の耳の回復の事に構う間もなく。

ただただ『透子っ』と叫び続けたらしい…。

そして始まる濠の悲しい日々。

手術は成功して、私は人並みの生活と将来を得る事ができたのに、濠の中から私への謝罪の気持ちを消す事はできなかった。

『運良く助かったけど、透子は死んでいたかもしれない』

片時も拭う事のできない後悔と罪悪感。
運良く担当医師が院内にいて、運良く手術室が空いていて…。

倒れた時に打ち所が悪ければ、それだけで死んでいたかもしれない。

思い返す度に震える身体と心とうまく付き合いながら生きてきた…。

そして、今もまだ、私への申し訳なさの渦に巻かれながらの日々。

そんな気持ちなんて、いらないのに。
ただ愛してもらえるだけで私は幸せなのに。
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