溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
濠の浴室に置いてる薔薇の香りの石鹸で身体を泡だらけにして、気分はようやく落ち着いた。
濠を思い出す香りに包まれると穏やかになる。

夕べ見た昔の甘く切ない濠の夢。
18歳の頃の濠。

やっぱりあの頃から格好良かったな。
ふふ…。
ちょっとドキドキしたりする久しぶりの感覚。

シャワーを浴びて、コーヒーを入れて。

カップを用意しようと食器棚を開けた途端に目に入った…

え?

嘘…っ。

私が地道に揃えてきた食器達の中に目立つ異質なコーヒーカップ。

私が買ってきたのは白地に水色の水玉模様のカップ一つだけなのに…。

「どうして…?」

そっと…恐る恐る手に取ったのは。
震える指先を何とか抑えながら両手で包みこんだのは。

白地に緑の水玉模様のカップ。
私が買ってきたカップと色違いの…。

「どうして…?」

カップを見つめる瞳から流れる涙を止めるなんてできないよ…。

ここに並べているなんて…。
濠が買ってきて置いたに違いない。
今まで食器どころか生活に必要な雑貨でさえ自分で買ってきた事ないのに…濠が自分で…。

私の会社の近くの雑貨屋さんで買ったと…確かに言ったから、わざわざ買いに行った…?

「濠…どうして…私を喜ばせるの…?」

ほろほろ零れる涙にかまう事なく、カップを抱きしめながら。

私が自分用に一つしか用意しなかったカップを見た濠が、どんな気持ちで
自分用のカップを買いに行ったのか…。

想像すると、さらに涙は止まらない。

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