溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
私の緊張感を感じてくれたのか、健吾さんは笑いながら

「大丈夫。今じゃ笑い話だから」

と笑いかけてくれるけれど、やっぱり話の内容に検討がつかない私はまだ微かにしか笑えない。

「…俺と柚は、高校生の時に付き合い出したんだけど。
交通事故で死にかけて、治療とリハビリの為に
俺の前から消えたんだ。…再会したのは10年以上もたってからで…。
それまではもう…振り返るのも嫌なくらい女と遊んでた。

…大丈夫?
ひいた?」

黙って聞いている私に気遣う健吾さんに、首を横に振って

「いえ…軽く…濠から聞いた事があるんで…。

それに…私と再会するまでは濠も一緒に遊んでたって…私に嫌われるのを覚悟して話してくれたんで…」

「そうか…。庇うわけじゃないけど、濠も壊れそうだったんだ。
はっきり言わないけど、俺みたいに…忘れられない女を探してるんだろうなあって…。

酒飲むと辛そうに

『透子って声に出して名前を呼びたい』

って言ってたよ」

声…。
あの頃聴力が落ちて上手く話せなかった濠は、私の名前を呼びかける事はできなかった…。
手術前に濠の目の前で倒れる直前に思わず叫ぶ声を聞いたのが初めて。

「あれだけ見た目いい男だから女はたくさん寄ってきて…それなりに相手してたけど…まあ深い付き合いもあって。

俺はそれ以上に遊んでたけど。

それが、あの店で透子ちゃんの後ろを偶然通り過ぎただけで気付くなんてな。
で、あっという間に透子ちゃん一筋の…透子ちゃんからも愛される幸せな男になったんだ。

俺は…そんな濠が羨ましくて仕方なかったよ」





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