溺愛結婚!?~7つの甘いレッスン~
「柚が…桜と俺を遺して死んでしまうかもしれないっていう怖さ以上に恐れるもんはないから。
柚がいればそれでいい」

はっきりと言い切る健吾さんを見ていると、何だか錯覚しそう。

私を呼ぶ時にはいつも、ちゃんと声が出る事に感謝して。
私を抱いて、どれほど私の体に激しい愛を注ぎ込んでも尚、止まらない心臓に安堵している濠。

『透子』

と迷いなく抱き寄せてくれる濠と健吾さんが、本当に似ていて。

まるで今、目の前には濠が座っているように…。
錯覚してしまいそう。

今頃遠いフランスにいる
濠が恋しい。

ふっと小さくため息をつくと、我慢している寂しさに体中覆われていく…。

「透子ちゃんと柚って似てるんだよ。
だから、大賞受賞を言えない理由…わからなくないから。

柚も俺に遠慮して結婚を断り続けてたし…。

濠は、単純だろ?
透子ちゃんが側にいるだけでいいから…。
悩んで複雑にしないようにな」

はっと顔を上げる私に、私の気持ちはわかっているからとでもいうような悪戯っ子のような笑顔。

あぁ…。

やっぱり濠に似てる。

優しい気持ちが久しぶり胸に生まれてきて、本当に濠に会いたくてたまらない…。

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