*銀狼-ギンロウ-*
「…分かった」
仕方なさそうにサクは言った。
「分かったから、もう行ってこいよ。今日はもう、いいから。俺もワガママいってごめんな」
力なくサクは微笑む。
アタシはその顔に苦しくなる。
「ごめんね、サク」
「もういいから。つか、紗耶香、こっち来て」
アタシがサクの元へ行くとサクはアタシをギュッと抱きしめた。
「離れんなよな…」
サクの声は力なくか弱い。
サクは分かっているのだろうか。
アタシの気持ちに気付いているのだろうか。
「…離れないよ」
そう言ってアタシはサクにキスをした。
今まででいちばん、気持ちが入らない悲しいキスだった。