彼。
それはたった一月前のこと。
マサキは彼に出会った。
いつもの猟から帰っている途中だった。その日は珍しくパパロが狩れ、気分良く帰路に着いていた。
ポツリと空から一滴の水が落ちてきた。
仰いで見ると、先ほどまで晴れていた空が白んでいた。
「ちっ、コイツを日干しにせなゃぁならんのに。」
独り文句を言うと、パパロの6本の足をしっかりと握り直し、走り出す準備をした。
ビュンビュンと森の中を駆け抜けて行く。
カリカの枝が前を塞ぎ、アカタの草が足に絡もうとマサキには関係がなかった。
マサキは足が速い。
猟場である森を抜けると、3つの山を越え5つの谷を過ぎた所にマサキの家はある。普通の者ならば3日はかかるであろうこの距離を、マサキは半日で行き来した。
2つめの山を越え、3つめの谷を飛び超えようとした時であった。
マサキは、眼下に黒い粒を見たような気がした。
マサキは彼に出会った。
いつもの猟から帰っている途中だった。その日は珍しくパパロが狩れ、気分良く帰路に着いていた。
ポツリと空から一滴の水が落ちてきた。
仰いで見ると、先ほどまで晴れていた空が白んでいた。
「ちっ、コイツを日干しにせなゃぁならんのに。」
独り文句を言うと、パパロの6本の足をしっかりと握り直し、走り出す準備をした。
ビュンビュンと森の中を駆け抜けて行く。
カリカの枝が前を塞ぎ、アカタの草が足に絡もうとマサキには関係がなかった。
マサキは足が速い。
猟場である森を抜けると、3つの山を越え5つの谷を過ぎた所にマサキの家はある。普通の者ならば3日はかかるであろうこの距離を、マサキは半日で行き来した。
2つめの山を越え、3つめの谷を飛び超えようとした時であった。
マサキは、眼下に黒い粒を見たような気がした。