狼に近付いた兎
すでに涙目のいちかは、派手な先生を見なかったことにして、自分の席を探した。

「あった。」

そこは、クラスの真ん中。
ど真ん中。


つまり、人に囲まれる席。

「(泣ける…。)」

冗談なんかじゃなかった。

「(せめて梨羽を…。でも。)」

今更文句言っても仕方ない。


女の子の友達を捜せばいいんだ!


妙なやる気が満ちて、ぐるりと辺りを見渡す。




一人。




ポツリ、と女の子が窓際に座っていた。

髪は、マロン色で、男の子と間違ってしまうくらいの長さだが、短い女の子なんていくらでもいる。

凄くきれいな顔立ちで、何もメイクしていない素の顔。


一言で言えば、美人。


誰が見てもその子は、美人だと言うだろう。

「あの…。」

意を決して話しかけた。


あたしは、バカだった。
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