-YUKI-落とした視線にキミがいた。
「私、お腹痛い」


「さっき飲んだ摩鬼コーヒーのせいかも」


つかみどころがない性格だ。

いい雰囲気だったのに急にお腹が痛いと訴えた。

昼食に飲んだコーヒーは少し変わっていた。

名前からして変わっていたが、
名前で注文したのも事実だった。

なんだか変な名前のコーヒーがあるからトライしてみようかってことで注文したのだった。

それにはリキュール酒を燃やしアルコール分を排除させてから煎れる独特なコーヒーであり、
最後にホイップクリームを乗せたけっこうナイスなコーヒーだ。

名前も摩鬼コーヒーというくらいだから、
悪魔の飲むコーヒーかもしれないね、
なんて飲む前に冗談を言ったりしていた。

でもまさかほんとに腹にくるほど悪魔のコーヒーになろうとは。


「痛い?だいじょうぶか?薬局行って薬買おうか?腹薬がいいかな」


「だいじょうぶ。少し眠る」


そう言って、
私の膝の上にクッションを置いてその上に頭を置いた。
このクッションがまた私たちの限りなく遠い関係を象徴しているようであった。

でもなんで私のヒザ枕なんだと思ったりする。

なにもそうしなくてもいいではないか。

座席に寄りかかりスヤスヤ眠ればいいことだろう。

よりによってヒザで眠る意味とは一体なんなのかを私はしきりに考えていた。

それに私はどうすればいい。

この中途半端な私の腕をどこへ置いたらいいんだ。
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