曇天



「思い出が消えるのは、寂しい……」



呟いた途端、空を見つめた。

曇天。

誰かが泣きそうな、空。



「わかってるのに、……おぼろげでも、分かってたのに。好きだった時はちゃんと、あったのに。それを、……自分のために否定して、嫌いって言う私は、……最悪、だよね」



昔の事だった。

私はずっと幼馴染が好きだったけど、私は中学受験失敗して幼馴染は成功して、むしゃくしゃして仕方がなかった。

あいつよりも頑張ったのに、私の方が頑張ったのに何で。

お母さんだってあいつのことを持ち出して怒った。

だから好きだった時間を消すみたいに、嫌いだと、そう言い張った。


それが悪いと気付いたのは、ごく最近の事。

彼が私の前に現れてからの事。


失敗したといえ滑り止めの学校に合格したから、そこに行くことになって、そこで彼に出会った。

告白して、つきあって、一緒に歩き始めて、初めて分かった気持ち。

自分のために“好き”を消した私の、残酷さ。

やっと、分かった。

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