Ghost lover
もう既に変な人だと思われているに違いないとは思いながらも、

僕は人目に付く場所では極力声を小さくして話している。

由乃は最初の内は不満がっていたけれど、事情を知ってからは何も言わなくなった。


「そう言えばもうすぐ進路相談だったっけ。どうするかな……」

『あれ? 美大に行くんじゃなかったの?』

「うん。美大だよ。でも美大って言っても沢山あるからさ……」


そんな他愛もない話を何時ものようにしていた時の事。

僕の少し前方を歩く女の子がパサリと何かを落として行った。

しかも落とした事に本人は気付いていないらしく、そのまま前へ前へと歩みを進めている。

もし何か貴重なものだったら大変だ。

慌てて走り出し、その場に落ちていた物を拾って更に前にいる女の子へと声をかけた。
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