童話少年-NOT YET KNOWN-

変移



目的がなんだったのか、もう、忘れてしまった。

はじめはただの純粋な興味。
伝承や物語につきものな幻の生物といったら、竜や、化ける狐や狸や、雪女や河童などの妖怪や、もしくは、鬼だ。
その中でどれか一つでも、実現してみたいと思った。
ただの、好奇心だった。

あまりにも危険な研究だ。
何しろ新種の生物、それも日本の説話界の頂上に君臨する妖怪を、新たに作り出そうというのだから。
当然政府の許可など得られるわけもないし、だいたい鬼道は、端から得ようなどと思ってもいなかった。
そんな研究を秘密裏で行う手助けを、表には出られない組織にしてもらいながら、少しずつ、少しずつ進めていった。
実験を繰り返し、膨大な金と時間を注ぎ込み、時には研究員の腕や足や家族さえも犠牲にしながら、ようやく軌道に乗りはじめた時のことだった。

ボスが消えた。
鬼道とは大学時代の同級生で、日本を変えるという使命と爆弾を勝手に背負いこんだ、馬鹿な男だ。
背負い込むのはそれだけでは足りないようで、いつだったか、生まれたばかりの子供を拾ってきたときは、さすがに笑った。
死んだのか捕まったのか、ボスはいなくなったが、組織が実質的に壊れたのはその後、滝川だとかいう名前の刑事の手によってだった。


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