童話少年-NOT YET KNOWN-
ただの興味本位からはじめた研究は、いつの間にか鬼道の生き甲斐になっていた。
あと少し、あと少しで、全く新しい種類の生物が誕生するところだったのに。
しかも組織の壊滅は、内部の裏切りが直接の原因だった。
誰か、警察と繋がっている人間が、組織内に存在したのだ。
鬼道は、海外へ高飛びしていた数年間ずっと、自分の野望を叶えることだけを目標に、資金と計画を温め続けていた。
その時はまだ、目的ははっきりしていたのだ。
わからなくなったのはそのもっとずっと後だ。
日本へ戻って、再び研究を始めた。
何年もかけて机上論を練ってから臨んだ今回は、鬼自身の力に筋力や関節や血管や皮膚がついていけないなんてことは、なかった。
巨大化も知能を上げることもうまくいったし、免疫力も、十分とはいえないが、少しだけついた。
実験は大成功だった。
実験の成果はまず、可愛い我が子たちの存在を社会に知らしめることで試した。
せいぜい外見で衝撃を受け、正体の不明確さに不安を煽られ、強大な力におののけばいい。
計画はこれからだ。
鬼道が企むのは、復讐だった。
裏切った仲間に、滝川に、報復をもたらしたい。
いつの間にかそれは研究の目的になり、その標的には、自分の研究の偉大さ興味深さを認めてくれない世間もが、含まれるようになっていた。