童話少年-NOT YET KNOWN-
罠かもしれない。
でも、少なくとも鬼は、あの中にいる。
ならヤヨイは?
──鬼道は、どこに?
鬼と一緒なのか。
もしかしたら、ここにはいないのかもしれない。
余計な会話をしたくないと、本能的に感じた。
声を聞き付けられる恐れだけでなく、ただ単純に、何も考えずにいたかったのだ。
弥桃の足は、吸い込まれるように自然に、扉の方へ向かった。
その後に続いた涓斗が扉に手をかけて端に身を寄せたのも、紗散が弥桃の横で腰を落としたのも、雉世が直径5cmもない小爆弾に触れたのも、ごく自然な動作だった。
それを分かっているかのように弥桃は、周りを見回さない。
「行くぞ」
その声で思い出したように目配せして、涓斗が取手にかけた左腕に、力を込めようとしたときだった。
────ドォォオオオオン!!!!
聞いた覚えのある爆音と、
受けた覚えのある衝撃と、
感じた覚えのある熱風が、
今まで体験したことのない規模で、襲いかかってきた。